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しかし、日銀は財務の健全性を確保するため保有可能な国債の上限を「日銀券の発行残高まで」との自主ルールを決めている。
その上限までのゆとりは約一〇兆円。
五四〇兆円を超える国債の発行残高に比べて、あまりに少ない。
 昭和五五年、六・一パーセントの利札(クーポン)のっいたロクイチ国債が暴落した。
ソ連のアフガン侵攻を契機として市中金利が急騰したため、一〇〇円の国債が七四円まで売られた。
そのときは、日銀が買い支えをした。
当時に比べると国債の発行残高が一〇倍近くに増えているから、日銀の買い支えだけで国債の価格を維持することは不可能であろう。
もっとも国債がある程度値下がりすればヘッジファンドは利益確定の買いをする。
また、これまでより利回りが良くなったと考えて、減らしてきた日本国債の残高を増やす機関投資家もあろう。
しかし、それでもジグザグと右肩下がりになり、一九八七年の株式のブラックマンデーのときのようなパニック的な売りが出る可能性もなくはない。
 債券先物が一〇〇円前後に下落すれば、現物の国債も連動して値下がりする(利回りは上昇する)。
銀行ほか機関投資家が所有している一〇〇円の現物国債の相場が、ロクイチ国債のときのように八〇円前後まで値下がりする可能性もまったくない、とはいえない。
 銀行の人は、国債が長期間順調に消化され、金利低下の過程でクーポンの高い既発債で利益を上げてきていたことに加え、長い間ゼロ金利が続いてきたため、ロクイチ国債の暴落は昔の話、近未来に国債が下落することはない、と思っている人が多数派のようだ。
 いま外国が注目しているのが、K前首相が掲げ、A政権、F政権が継承している「痛みを伴う構造改革」で日本が将来に向けて財政赤字をどこまで減らせるか、という点である。
その実現性が高いと見られれば、日本の債券がこれ以上売られる可能性は低いだろう。
いっぽう政権が不安定でこの赤字が増え続けていくと見られれば、日本国債は売られるだろう。
なにしろGDP比では日本はアメリカの三倍の国債発行残高なのだから。
 『国売りだもうことなかれ 論戦2005』(ダイヤモンド社)ほか多くの憂国の書を書かれているRさんは、道路関係四公団民営化推進委員会の議論を中心に書かれた『権力の道化』(新潮社)の中で次のように述べている。
 日本国のお金は一体どうなっているのか。
それは予算という形で見ることができる。
庶民の感覚では、予算とは一般会計予算であろう。
一般会計予算は約八〇兆円、税収で賄っているのが約四〇兆円で赤字国債による借金が約四〇兆円である。
大概の国民は、自分たちが払う税金の集合体が予算であり、額は八〇兆円規模だと、従来、考えてきた。
しかし、そこにはおかしなことがある。
他のどの国にもないような隠されたお金が大量に存在するのだ。
それが特別会計である。
 特別会計はいま、三一種類もあり、その中を流れるお金の総額はざっとみて、三七〇兆円である。
それも私たちが払う税金や年金など、私たちのお金に他ならない。
所得税や法人税、相続税や消費税は一般会計に行くが、特別会計に流れていくお金は、形を変えた税金でもある。
 特別会計とは具体的には何なのか。
登記特別会計、電源開発促進対策特別会計、船員保険特別会計、森林保険特別会計、特許特別会計、治水特別会計等々、本当にさまざまだ。
 道路整備特別会計の約五兆七〇〇〇億円をけじめ、全特別会計に入る約三七〇兆円の使い道は、国民の目には見えてこない。
特別会計の実態がほとんどわからないのは、国会でも実質的に論議されないからだ。
 Rさんはまた、「つい先頃まで、特殊法人は七七もあった。
K政権は、構造改革を実行するに当たって七つの特殊法人を先行事例として民営化することを決めた」とも書いている。
 Yさんから伺った話では、「特別会計も含めた歳入と特殊法人に出て行く歳出との差、つまり目に見えない赤字が少なくとも三〇〇兆円は超えていて、それが増え続けている」とのこと。
つまり公表されている債務残高八二七兆円と合計して、一一〇〇兆円ほどの赤字があることになる。
 国の歳出歳入を家計にたとえれば、「四〇〇万円強の年収しかないのに一年に八〇〇万円も使っていて、それが長年続いていて借金と借金の利子が毎年積み上がってきている。
このままだといつかは破産する」という話なのに、その深刻な事態について、政府が国民によく説明し理解を得てこなかったことが、大きな問題であると思う。
 もう一つ懸念されることは、地方債も大量に発行されていて発行残高は一〇年前の一〇倍近くになっていることである。
地方債は上場されていない。
もっとも、業者間取引は可能だが、売買高は少ない。
地方自治体も財政の厳しさを増している。
 地方債の下落に対抗するには国債の債券先物を売ってヘッジするしか方法はない。
そのこつただけであり、ヘッジファンドも先物の売買で利益を手にすることもあれば損をすることもある。
 債券先物は三パーセントの証拠金で売買できるから、相場の動きは早い。
そのような先物の存在を問題視する人もいるかと思うが、為替先物、船賃の先物、石油の先物などの先物市場がなければ相場変動をヘッジできない。
アメリカのREIT市場では先物を使って金利高をヘッジすることができる。
先物市場は市場経済に欠かせないものである。
ヘッジファンドが実物取引に介在して取引を活発に行なうことは、相場が一方通行にならないために、市場経済下でよく機能している。
世界初の先物市場は、およそ二八〇年前の大坂堂島の米・穀物市場とのことだが、いまの日本では、先物市場の役割がよく理解されていないように思える。
 平成一七年の日銀による量的緩和・ゼロ金利政策解除前、政府が日銀に対して「量的緩和あるいは金融引締めはデフレ脱却時に行なうべきである」とか、「量的緩和はまだ早い」といったアナウンスをしているが、金利はグローバルな市場経済のもとでは中央銀行だけではコントロールできない。
前述したように、日銀は分かっているが政府の意向もあり悩んでいるように思える。
 国の中央銀行は、政権から中立的であるのが健全な姿である。
B大統領再選の際もFRB(米連邦準備理事会)のG議長(当時)は、インフレ抑制のため選挙と景気にマイナスになる利上げを行なっている。
後任のB議長もその路線を継承している。
 前述したが、円安ドル高は、自動車、造船、鉄鋼など日本の輸出産業にプラス、石油、食料品、衣料品などの、輸入の産業にとってはマイナスに働く。
 FRBのG議長は選挙前から急ピッチで利上げを行なってきたが、それは不動産に向かっているアメリカ国内の銀行からの資金を止めるため。
つまり、バブル崩壊の予防的措置として実行された施策である。
 アメリカの一年物TB(短期国債)の金利は五パーセント。
メガバンクや生保、年金など機関投資家は、為替リスクはあっても五パーセントで運用できる先はないから集まった資金の運用の中に占める外債の比率を高めてきているようだ。
 為替は、対ドルでは二〇〇五年初めは一〇〇円前後であった。
機関投資家はこれまでに取得してきた米国長期債の含み益がある。
したがって、多少円高になって米国債の持ち高を増やしても、これまでの含み益と相殺でき、かりに一二〇円が一一〇円になっても損にはならない。

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